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東京高等裁判所 平成7年(行ケ)139号 判決

東京都新宿区西新宿2丁目1番1号

原告

三和シャッター工業 株式会社

代表者代表取締役

髙山俊隆

東京都豊島区南池袋2丁目22番1号

原告

三和エクステリア株式会社

代表者代表取締役

友山誠治

両名訴訟代理人弁理士

稲葉昭治

両名輔佐人

上杉宴弘

東京都千代田区霞が関3丁目4番3号

被告

特許庁長官 清川佑二

指定代理人

梅澤修

吉山保祐

伊藤三男

主文

原告らの請求を棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第1  当事者が求めた判決

1  原告ら

特許庁が、平成3年審判第10446号事件について、平成7年3月14日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

2  被告

主文と同旨。

第2  当事者間に争いのない事実

1  特許庁における手続の経緯

原告らを共同出願人とする、意匠に係る物品を「門扉」とし、その構成を本願願書に添付された図面(別添審決書写し別紙第一の図面と同じ。以下「本願図面」という。)に示すとおりの意匠(以下「本願意匠」という。)の意匠登録出願(出願日昭和62年7月8日、同年意匠登録願第27821号)は、平成3年4月26日に拒絶査定を受けたので、原告らは、同年5月24日、これに対する不服の審判の請求をした。

特許庁は、同請求を平成3年審判第10446号事件として審理をしたうえ、平成7年3月14日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をなし、その謄本は、同年5月1日、原告らに送達された。

2  審決の理由

審決は、別添審決書写し記載のとおり、本願意匠は、昭和59年9月6日発行の意匠公報記載の、意匠に係る物品を「門扉」とし、その構成を同意匠公報図面(別添審決書写し別紙第二の図面と同じ。以下「引用図面」という。)に示すとおりの登録第551350号類似第1号意匠(以下「引用意匠」という。)に類似し、意匠法3条1項3号に該当するから、意匠登録を受けることはできないとした。

第3  原告ら主張の審決取消事由の要点

審決の理由のうち、本願意匠及び引用意匠の認定、両意匠に係る物品が一致することは認める。形態について、両意匠に共通する基本的構成態様の認定は、枠体を形成する部材に横桟が存在するとした点及び横格子部を形成する部材に横桟体が存在するとした点を否認し、その余は認める。具体的態様の共通点の認定及び相違点〈1〉の認定は争う。相違点〈2〉の認定は認める。両意匠の類否判断は争う。

審決は、相違点〈1〉を誤認し(取消事由1)、本願意匠と引用意匠との相違点を看過し(取消事由2)、意匠法3条1項3号の規定の誤った解釈に基づいて、両意匠の類否判断をした結果、本願意匠は引用意匠に類似すると誤って判断した(取消事由3)ものであるから、違法として取り消されなければならない。

1  取消事由1(相違点〈1〉の誤認)

(1)  審決は、「両意匠は、左右に立設した2本の縦框の上下端に各1本の横桟を架設して縦長矩形状の枠体を形成し、該枠体部の内側全面に細い横桟体で間隔を密にして、多数本等間隔に並設して横格子部を形成した基本的構成態様が共通するものである。」(審決書2頁19行~3頁4行)と認定したが、誤りである。

「框」とは「建具の四隅を固める部材」を称し、「桟」とは「框組された框の間を仕切るために組入れられる部材」を称する(「建築用語図解辞典」・甲第5号証130~131頁)のであり、桟と框とは明確に区別されており(「広辞苑第3版」・甲第16号証)、横枠材は上下框とみるのが常識であるから、左右縦框間の上下端に組付けられる部材は、上下框と称するのが正当であり、横桟と称するのは誤りである。

また、縦框間に組込まれる部材は横桟体ではなく、横連子子と認識すべきである。審決認定のように、上下框及び横連子子を横桟体と解するときは、目透き戸(「建築大辞典」・甲第6号証1507頁)のような外観が把握されることになって、横連子戸(同1213頁)としての正確な外観の把握ができない。

(2)  審決は、「各部の具体的な態様については、枠体部の内縁に細幅の入れ子縁を設けて、各縦框と上下の横桟の前後面側を幅広とする偏平矩形状の筒体とし、上下の横桟を縦框よりやゝ広幅とし、枠体内の細い横桟体を断面形状を略矩形状として、その四隅を面取りした細い桟体とし、各細い桟体間の間隙を細い桟体の前後面側の幅の略1/4とする狭い間隔とした点が共通する」(審決書3頁5~12行)と認定したが、誤りである。

面取りというものは、「角断面を持つ建築部材の出隅を削り、面を作ること」(「建築大辞典」・甲第6号証1513頁)を意味するものであって、本願意匠の横連子子の断面形状(本願図面のA-A線拡大断面図)は、八角形となっていて、出隅を削り取って作られた面ではない。また、引用意匠の横連子子の断面形状(引用図面のA-A断面図)は、その上下面自体の中央部が円弧状の彎曲面となっていて、この彎曲面の左右が略水平面となっており、出隅を削り取って作られた面などは存在しない。

したがって、審決の両意匠の横桟体の断面形状が四隅を面取りした態様が共通するとの認定は誤りである。

(3)  審決は、両意匠の具体的態様の相違点〈1〉として、「横格子部の細い横桟体を、本願意匠は、35本としたのに対して、引用意匠は、31本としている点、そして、該細い横桟体を、本願意匠は、前後面側の上下を幅広に面取りした断面形状を中空の偏平八角形状の筒体としたのに対して、引用意匠は、上下面側の中央から前後方向に向かって面取りして断面形状を略六角形状の棒体としている点」(審決書3頁15行~4頁2行)であると認定したが、誤りである。

すなわち、前記(1)及び(2)のとおり、「横格子部の細い横桟体」は「左右縦框間の上下端に組付けられた上下框及び縦框間に組込まれた横連子子」であり、本願意匠の横連子子の断面形状は八角形となっているが、面取りはなく、また、引用図面のA-A断面図では、引用意匠の横連子子の断面形状は、面取りはなく、六角形の棒体でもない。

被告は、引用意匠の横連子子の断面形状について、外観を正確に把握しないまま、略六角形状と主張するが、引用図面のみで特定しえない場合には、その出願時の図面(甲第4号証)を参酌して審理するのが当然であって、該図面のA-A及びB-B断面図をみれば、六角形状の概念に当てはまらないことは明らかである。

2  取消事由2(相違点の看過)

本願意匠において、左右縦框は、正面視左右端縁の長手方向に面取りがされていて、上下框を面落ちさせて結合させる面内納まり(「建築大辞典」・甲第6号証1512頁)となっているのに対し、引用意匠においては、左右縦框は、面取りがなくかっ上下框と面一の結合納まりとなっているという点で、両意匠は相違し、かかる相違は門扉全体に与える印象を、横框に対して縦框を引き立たせるか、同化されるかの重要な役割を有するところ、審決は框組としての外観を把握しておらず、面落ちさせて結合させる面内納まりか面一の結合納まりかの違いを把握することなく、上記相違点を看過した。

3  取消事由3(本願意匠と引用意匠との類否判断の誤り)

審決は、上記のとおり、相違点〈1〉を誤認し、相違点を看過し、意匠法3条1項3号の規定の誤った解釈に基づいて類否判断をした結果、本願意匠は引用意匠に類似すると、誤って判断した。

(1)  意匠法3条1項3号は、「前二号に掲げる意匠」から容易に創作できたか否かという、デザイン要素それ自体に対する斬新性や応用性の是非を問題としているのではなく、「前二号に掲げる意匠」との間で一般需要者の立場から対比観察することにより、その美感の類否が問題となるのに対し、同条2項は物品との関係を離れた抽象的な広く知られたデザイン要素との結合を基準として、当業者の立場からみた着想の新しさ、ないしは独創性を問題としている。ここに一般需要者とは、「市場に供された実際の具体的な物品を見て購入を欲しようとする者の立場」であり、同法2条1項に規定する「意匠」の定義から明らかなように、物品と「形状、模様等(モチーフ)」とは一体不可分の関係にある。

したがって、意匠法3条1項3号の該当性を判断するに当たっては、本願意匠と引用意匠とのデザイン要素の違いを、物品と一体不可分のものとして把握し、両意匠に係る物品が、市場に供されたときを想定して、一般需要者の立場に立って、両意匠を対比観察することにより、商品購入の意思決定に影響を及ぼすほどの美感の違いとなって表れているか否かを個々に検討して、類否判断を行なうべきである。

ところが、審決は、意匠法3条2項で規定される登録要件において評価されるべき本願意匠が採用したデザイン要素そのもの自体についての着想の新規性や創作の応用性について評価した結果、本願意匠が引用意匠に類似すると誤って判断したものである。

すなわち、審決は、相違点〈1〉の判断において、「格子部の細い桟体を面取りすることは、この種の物品の分野においては、むしろ普通になされている態様であって、本願意匠の細い横桟体の前後面側の上下を幅広に面取りした点は、ありふれた改変にとどまるものであり」(審決書5頁12~16行)と認定し、また、「桟体が中空であるか否かについても、本願の出願前から、この種の物品の分野においては、筒体としたり棒体とすることは、普通になされている態様であって、本願意匠の態様もありふれた改変にとどまる」(審決書6頁8~12行)旨認定しているが、このような認定は、デザイン要素それ自体に対する斬新性や応用性の是非を問題としたものである。

上記認定に基づいて、これらの存否は類否判断に影響をあたえないとの審決の判断は、創作性を要件とし、しかも物品とは遊離した形態に基づいて判断するとの立場にたつものであって、意匠の定義に合致しないばかりか、最高裁判所昭和45年(行ツ)第45号昭和49年3月19日判決が示した判断にも合致しないものである。

被告の意匠法3条1項柱書に基づく主張は、同柱書の「創作をした者」についての解釈を誤ったものである。「創作をした者」については、「意匠登録を受けることができる者」と解するのが正当であって、「創作」の文言をもって、意匠法3条1項各号の新規性の要件に「創作性の要件」までをも含めて判断してよいとすることはできない。

(2)  上記した意匠法3条1項3号の規定するところに従って、本願意匠と引用意匠とを対比すると、両意匠は、框組した中央部に横連子子をその上下幅の約1/4の間隔をもって縦方向に並設して連子面を形成し、框と連子面との取合わせ部に入れ子縁を介装して各物品の骨子となる構成部材を配置させるデザイン要素については共通しているが、両意匠に係る物品である框組された門扉にあっては、外観を占める割合が最も大きい連子面の違いが、一般需要者の商品購入の意思決定に影響を及ぼす重要な要部となるところである。

そこで、両意匠の連子面についてみると、本願意匠の連子面は、横連子子の形状を八角形にし、上下に隣接する横連子子の前後側の垂直面間に存する隙間が垂直面の上下幅の3倍となるように設定して、対向する傾斜面及び水平面によって、入射角の高い光をも水平面で受けて反対側に反射させるという採光の助けによって、採光側の各面における明度に変化性を与えるように、上下に並べた態様が、一つの意匠的まとまりとなって顕著に表出された外観を呈しているのに対し、引用意匠の連子面は、横連子子の形状を上下面の中央部を円弧状彎曲面として、その左右を略平面とした所謂山高帽形状にし、上下に隣接する横連子子の前後側の垂直面間に存する隙間が垂直面の上下幅の1/3倍となるように設定して、入射角の高い光を反対側に通さないよう乱反射させて採光を和らげ、採光側の面に陰影を与えるように、上下に並べた態様と中央の2本の円筒状縦連子子によって隙間における曲面に統一感を与えると共に、連子子で統一された連子面に変化を与えたが一つの意匠的まとまりとなった外観を呈するという決定的な違いとなって表れている(原告ら作成の「本願意匠と引用意匠の対比図」・甲第7号証の1~3)。

さらに、上記のような連子面の外観上の違いと相まって、本願意匠では、面内により目通しして引き立たせた縦框と、八角形の角張った横連子子を上下にずらりと並べた起伏の激しい連子面とし、隙間との取合わせで積極的に採光の助けによって採光側の各面における明度に変化性を与えて、これらが一体不可分に融合した躍動的な美感を持った門扉としての外観を呈している。

これに対し、引用意匠では、面一に同化させた四周框と、前後の広幅な垂直面をもつ横連子子を上下に並べて平滑な連子面とし、隙間との取合わせを、横連子子の上下の円弧状面と円筒状縦連子子によって、光を和らげて採光側の連子面に陰影を与えて、これらが一体不可分に融合した静的な美感を持った門扉としての外観を呈している。

以上のとおり、両意匠は、「物品を形造るための骨子となる構成部材を配置させた」という概念的なデザイン要素が共通するのみで、物品それ自体の外観を決定づけるために、一体不可分に結びつけているデザイン要素が施されている個々の構成部材については、共通するものなど全く存在せず、これらの外観の違いは、両意匠の基調そのものを左右する程の大きな外観の違いとなって表れており、両意匠に係る物品が市場に供された場合、一般需要者は、これらの外観の違いから誘発される美感の差異を明確に区別して、商品購入の意思決定をすることが明らかである。なお、原告らが専門用語を用いて主張しているのは、本願意匠及び引用意匠の各部の外観的構造を特定するためであって、一般需要者はかかる専門用語を知らなくてもその外観を把握できる。

したがって、両意匠は類似しない。

第4  被告の主張の要点

審決の認定判断は正当であって、原告らの主張はいずれも理由がない。

1  取消事由1について

(1)  両意匠に係る物品は門扉であって、両意匠の扉を形成する骨格的態様は、縦長矩形状の枠体と、その内方に形成された横格子部とからなり、該枠体部は、2本の縦枠材とその上下に渡された2本の横枠材とから構成されていると認められる。

審決は、上記の構成を、縦枠材については縦框と、横枠材については単に横桟という一般的な名称で認定したものであって、原告ら主張の上框及び下框を、横桟という一般的な名称で認定したものである。

「建築用語図解辞典」(乙第1号証)に「出入り口わく、板戸」として図示された「板戸(上ざる、下ざる)」には、縦長矩形状の板戸の周辺の枠体部の上部の横枠材を「上桟」、下部の横枠材を「下桟」として表記している(同号証129頁)。同じく、「門」及び「門、出入り口」として図示された「かぶき門」、「むな門」及び「から戸」には、扉の周囲を形成する枠体部の上部の横枠材を「上ずり桟」、「上桟」、下部の横枠材を「下ずり桟」、「下桟」として表記している(同170頁、173頁)。さらに、「さん」として「戸などの横木をいう」と記載されている(同266頁)。

上記によれば、審決の、両意匠は、「横桟を架設して縦長矩形状の枠体を形成し、該枠体部の内側全面に細い横桟体」(審決書2頁20行~3頁2行)で横格子部を形成した基本的構成態様が共通するものであるとの認定に誤りはない。

(2)  両意匠の横格子部を形成する細い横桟体における具体的な態様は、断面形状を略矩形状として、その四隅について、本願意匠は、前後面側の上下を幅広に削り前後面の上下に面を形成(面取り)し、引用意匠は、上下面側の中央から前後方向に向かって削り、上下面側の前後に面を形成(面取り)しているものである。

よって、審決の「細い横桟体を断面形状を略矩形状として、その四隅を面取りした細い桟体とし」(審決書3頁9~10行)た点が共通するとの認定に誤りはない。

(3)  両意匠を子細に見れば、本願意匠は、断面形状で見ると、角部が8つあることから、中空の偏平八角形状の筒体と認められ、引用意匠は、断面形状で見ると、角部が6つあることから、略六角形状の棒体と認められる。

引用意匠の細い横桟体の態様については、その断面形状が、引用図面(A-A断面図)によれば、略矩形状であって、その左右の外側は、直線的であり、その上下の外側は、中央部がやゝ突出している態様であることが、認められるが、該突出部が曲線的であるか、直線的であるかまでは特定できるものではない。したがって、審決は、引用意匠の細い横桟体の断面形状を「六角形」とはず「略六角形状」と認定したものである。

以上によれば、審決の相違点〈1〉の認定に誤りはない。

2  取消事由2について

原告ら主張のとおり、本願意匠の左右縦框は、厚さ方向において、正面視左右端縁の長手方向に面取りがされているのに対して、引用意匠の左右縦框は面取りがない点が相違するが、本願意匠にみられるその面取り部も、扉の周囲を形成する広幅の枠体の角部にきわめて僅かに形成されたものである。本願図面によると、この面取り部は、正面図、左側面図、右側面図に細幅の帯状部として表されているが、この面取り部が形態として認識できるのは、B-B線拡大断面図において特にその部位を注意してみた場合に初めて認識される程度のものである。加えて、この種の物品の属する分野にあっては、枠体の外周部に本願意匠のようにきわめて細い幅の面取りを施すという程度のことはきわめて普通になされていることである。そうであるとすると、その面取りの有無も相違としてわざわざ採り上げて評価する程のものではない。

原告らは、さらに、縦框と上下框の納まりが面内させた納まりか、面一の納まりかに、形態上の相違があると主張するが、その違いも、本願意匠の縦框に形成した面取りがきわめて僅かに面取りしたものであるので、その結果が表れる縦框と横桟の納まり部にみられる相違も、きわめて僅かなものとなり、全く看者の注意を惹かないものであるから、相違としてわざわざ採り上げて評価する程のものではない。

以上のとおり、上記のいずれの相違も類否判断を左右する要素として採り上げるに足りないものであるから、審決は、あえて相違として採り上げなかったまでであって、相違点を看過したものではない。

3  取消事由3について

(1)  意匠法3条1項に基づいて、意匠が新規なものとして登録を受けることができるために、その意匠の各部にみられる公知意匠との相違につき、それぞれ創作性があるとか、その相違が形態上の特徴となって表出されているとか等、相違点の評価がされそれが形態全体に影響を与えるものでなければならない。

これを本願意匠についてみると、審決認定の本願意匠における相違点のうち、横格子部の細い縦桟体の形状及び横格子部内に細い縦桟を設けていない態様は、いずれも普通のありふれた態様であり、そこに何ら形態上の特徴あるいは創作性の存在も窺えないものである。すなわち、横格子部の細い縦桟体の形状については、本願意匠の桟体に表された面取りが、この種の物品において本願出願前から、広くなされている面取りを極めて普通の態様で表したまでのものであるから、そこに格別の創作はなく、意匠の形態的特徴とはならないものであり、そして、桟体が中空である点についても、本願出願前から、普通になされている態様である(登録第535728号意匠・乙第2号証)。また、本願意匠の横格子部内に細い縦桟を設けていない態様は、本願出願前から、この種の物品の分野においては、むしろ普通になされている態様であって、これもまた特徴がある態様とはいえない。

このように、審決は、本願意匠にみられる相違点については、「いずれも部分的な差ないしは僅かな差で、前記の共通するとした特徴の中に包摂される微弱な相違」(審決書7頁7~9行)と判断したものであって、創作容易な意匠であると判断したものではない。

したがって、審決に意匠法3条1項3号の解釈について誤りはなく、相違点についての認定判断は正当である。

(2)  原告らは、両意匠に相違するデザイン要素を主張するが、これは、原告らが専門家の立場に立って両意匠の細部における構造上の導いを専門用語を用いて先入観を入れて誇張した主張にすぎない。

第5  証拠

本件記録中の書証目録の記載を引用する。書証の成立については、いずれも当事者間に争いがない。

第6  当裁判所の判断

1  取消事由1(相違点〈1〉の誤認)について

(1)  審決の両意匠に共通する基本的構成態様の認定は、枠体を形成する部材に横桟が存在するとした点及び横格子部を形成する部材に横桟体が存在するとした点を除いて、当事者間に争いはない。

原告らは、桟と框とは明確に区別されており、横枠材は上下框とみるのが常識であるから、左右縦框間の上下端に組付けられる部材は、上下框と称するのが正当であり、横桟と称するのは誤りであり、また、上下桟と共に、縦框間に組込まれる部材は横桟体ではなく、横連子子と認識すべきであると主張する。

しかしながら、桟と框とが用語として区別されているからといって、必ずしも同じ部材について別の用語を用いることを妨げるものではない。そして、「広辞苑第3版」(甲第16号証)に、「さん」の意味として「戸・障子の骨」(同号証988頁)と記載され、「建築用語図解辞典」(乙第1号証)には、「さん」として「戸などの横木をいう」(同号証266頁)と記載され、「出入り口わく、板戸」として図示された「板戸(上ざる、下ざる)」(同号証129頁)には、縦長矩形状の板戸の周辺の枠体部の上部の横枠材が「上桟」、下部の横枠材が「下桟」として表記され、また、「門」及び「門、出入り口」として図示された「かぶき門」、「むな門」及び「から戸」には、扉の周囲を形成する枠体部の上部の横枠材が「上ずり桟」、「上桟」として、下部の横枠材が「下ずり桟」、「下桟」として、それぞれ表記され(同170頁、173頁)、同じ「建築用語図解辞典」(甲第5号証)に「板戸、格子戸」として図示された「格子戸」(同号証130頁)には、縦長矩形状の板戸の周辺の枠体部の上部の横枠材が「上かまち(胴桟)」として表記されていると認められ、上記記載によれば、審決が、左右縦框間の上下端に組付けられる部材を「横桟」と、縦框間に組込まれる部材を「横桟体」と、それぞれ認定した点に誤りはない。

原告らは、両意匠における上下框及び横連子子を横桟体と解するときは、横連子戸としての正確な外観の把握ができないと主張する。

しかしながら、本願図面及び引用図面によれば、両意匠はともに、縦長矩形状の枠体を形成し、枠体部の内側全面に細い横木で間隔を密にして、多数本等間隔に並設して横格子部を形成した態様を有することは明らかであり、これを、「横連子戸」との用語を用いずに、審決認定のように、「両意匠は、左右に立設した2本の縦框の上下端に各1本の横桟を架設して縦長矩形状の枠体を形成し、該枠体部の内側全面に細い横桟体で間隔を密にして、多数本等間隔に並設して横格子部を形成した基本的構成態様が共通するものである。」(審決書2頁19行~3頁4行)と表現しても、両意匠の正確な対比は可能であり、このように表現することに、誤りがあるとは認められない。

原告らの上記主張は失当である。

(2)  本願意匠及び引用意匠の共通する各部の具体的な態様のうち、各横格子部の細い横桟体の断面形状の面取りした面の有無について、「建築大辞典」(甲第6号証)によれば、[面取り」とは「角断面を持つ建築部材の出隅を削り、面を作ること」(同号証1513頁)を意味するものと認められるが、本願図面のA-A線拡大断面図に示された細い横桟体の断面形状は、前後面側を垂直の面とし、上下側部を中央部が前後面側から等距離に平らに上下に突出して各辺がほぼ同じ長さのやゝ偏平な八角形の態様であると認められ、八角形の前後面及び上下面をつなぐ斜めの面が矩形の四隅を削り取って作られた面ということができる。

一方、引用意匠の細い横桟体の態様について、被告は、断面形状で見ると、角部が6つあると主張するが、引用図面及び引用意匠の意匠登録願添付図面(甲第4号証)によれば、その各A-A断面図に示された細い横桟体の断面形状は、前後面側を垂直の面とし、上下側部を中央部が前後面側から等距離に上下にやゝ突出している棒状のものと認められるが、矩形の四隅を削り取って作られた面と認められるものはなく、略六角形状の態様であるとも認められない。そうすると、引用意匠において、細い横桟体の「断面形状を略矩形状として、その四隅を面取りした」と認定することは用語として不適切といわなければならない。

したがって、審決の、両意匠は、「枠体内の細い横桟体を断面形状を略矩形状として、その四隅を面取りした」(審決書3頁8~10行)点が共通するとの認定は相当ではない。

上記に判示したところ並びに本願図面及び引用図面によれば、本願意匠及び引用意匠は、その具体的態様として、枠体部の内縁に細幅の入れ子縁を設けて、各縦框と上下の横桟の前後面側を幅広とする偏平矩形状の筒体とし、上下の横桟を縦框よりやゝ広幅とし、枠体内の細い横桟体を断面形状を前後面側は垂直の面とし、上下側部は中央部が前後面側から等距離に上下に突出した細い桟体とし、各細い桟体間の間隙を細い桟体の前後面側の幅の略1/4とする狭い間隔とした点が共通するものと認められる。

(3)  前示したところによれば、審決の、相違点〈1〉についての認定(審決書3頁15行~4頁2行)のうち、引用意匠において、細い横桟体を「上下面側の中央から前後方向に向かって面取りして断面形状を略六角形状」(審決書3頁20行~4頁2行)としているとの認定は誤りといわなければならない。

そして、本願図面及び引用図面によれば、本願意匠と引用意匠とは、横格子部の細い横桟体を、本願意匠は、35本としたのに対して、引用意匠は、31本としている点、そして、該細い横桟体を、本願意匠は、断面形状を上下側部を中央部が前後面側から等距離に平らに上下に突出した中空の偏平八角形状の筒体としたのに対して、引用意匠は、断面形状を上下側部を中央部が前後面側から等距離に上下にやゝ突出している棒体としている点で相違するものと認められる。

この相違点が、両意匠の類否の判断にどのような影響を及ぼすかについては、3項において検討する。

2  取消事由2(相違点の看過)について

本願意匠と引用意匠との間に、原告らが取消事由2で主張する差異があることは、被告も認めるところである。

上記差異が、原告ら主張のように両意匠の類否の判断に影響を及ぼすものかどうかは、次項において検討する。

3  取消事由3(類否判断の誤り)について

(1)  本願意匠及び引用意匠に係る物品がともに門扉であって、この点で両者が一致することは、当事者間に争いはない。

前示当事者間に争いのない事実及び前示認定の事実によれば、両意匠は、左右に立設した2本の縦框の上下端に各1本の横桟を架設して縦長矩形状の枠体を形成し、該枠体部の内側全面に細い横桟体で間隔を密にして、多数本等間隔に並設して横格子部を形成した基本的構成態様が共通すること、及び、具体的態様において、枠体部の内縁に細幅の入れ子縁を設けて、各縦框と上下の横桟の前後面側を幅広とする偏平矩形状の筒体とし、上下の横桟を縦框よりやゝ広幅とし、枠体内の細い横桟体を断面形状を前後面側は垂直の面とし、上下側部は中央部が前後面側から等距離に上下に突出した細い桟体とし、各細い桟体間の間隙を細い桟体の前後面側の幅の略1/4とする狭い間隔とした点が共通すること、両者は、その具体的態様において、〈1〉横格子部の細い横桟体を、本願意匠は、35本としたのに対して、引用意匠は、31本としている点、そして、該細い横桟体を、本願意匠は、断面形状を上下側部を中央部が前後面側から等距離に平らに上下に突出した中空の偏平八角形状の筒体としたのに対して、引用意匠は、断面形状を上下側部を中央部が前後面側から等距離に上下にやゝ突出している棒体としている点と、「〈2〉横格子部内の中央寄り縦方向に、引用意匠は、2本の細い縦桟を設けているのに対して、本願意匠は、横格子部内には、何も設けていない点」(審決書4頁3~5行)、さらに、原告らが取消事由2で主張する点で差異を有するものといわなければならない。

(2)  以上の事実を前提として両意匠を検討すると、両意匠の共通する構成態様である、左右に立設した2本の縦框の上下端に各1本の横桟を架設して縦長矩形状の枠体を形成し、該枠体部の内側全面に細い横桟体で間隔を密にして、多数本等間隔に並設して横格子部を形成した基本的構成態様が共通すること及び具体的態様において、枠体部の内壕に細幅の入れ子縁を設けて、各縦框と上下の横桟の前後面側を幅広とする偏平矩形状の筒体とし、上下の横桟を縦框よりやゝ広幅とし、枠体内の細い横桟体を断面形状を前後面側は垂直の面とし、上下側部は中央部が前後面側から等距離に上下に突出した細い桟体とし、各細い桟体間の間隙を細い桟体の前後面側の幅の略1/4とする狭い間隔とした態様は、両意匠の形態上の特徴を最もよく表しており、意匠的まとまりを形成し、美感を想起させる視覚的訴求力が強く、両意匠の全体的な態様において、両意匠が共通しているとの支配的な印象を与えるものと認められる。

(3)  これに対して、前記相違点のうち、上記〈1〉の、本願意匠が横格子部の細い横桟体を断面形状を上下側部を中央部が前後面側から等距離に平らに上下に突出した中空の偏平八角形状の筒体とした点は、登録第535728号意匠公報(乙第2号証)にみられるとおり、本願の出願前から行われてきた扉面の構成であって、ありふれた改変に止まるものであって、横格子部の細い横桟体の本数の差や、細い横桟体の形状の差は、枠体部の内側全面に細い横木で間隔を密にして、多数本等間隔に並設して横格子部を形成して、細い横桟体を断面形状を前後面側は垂直の面とし、上下側部は中央部が前後面側から等距離に上下に突出した細い桟体とし、各細い桟体間の間隙を細い桟体の前後面側の幅の略1/4とする狭い間隔とした態様に埋没する程度の視覚的訴求力しかなく、両意匠を異なったものと認識させるまでに至らない微差にすぎないものと認められる。

相違点〈2〉の横格子部内の細い縦桟の有無の差異については、引用意匠の横格子部内の細い縦桟は僅かな間隔にその存在を視認できるものであり、また、本願意匠の細い横桟体のみからなる本願意匠の態様は、前示意匠公報(乙第2号証)、登録第551351号意匠公報(甲第8号証)、同第603950号意匠公報(同第9号証)にみられるとおり、本願の出願前から扉面の構成として普通になされている態様であって、これをもって、前示両意匠に共通する基本的及び具体的態様を凌駕して、両意匠を別異のものと認識させるに足りる意匠的特徴ということはできない。

(4)  原告らが取消事由2で主張する、本願意匠においては、左右縦框は、正面視左右端縁の長手方向に面取りがされていて、上下框を面落ちさせて結合させる面内納まりとなっているのに対し、引用意匠においては、左右縦框は、面取りがなくかつ上下框と面一の結合納まりとなっているとの相違点は、特に看者の注意を惹くものではなく、その意匠的効果は微弱なものというべきであり、前示両意匠に共通する基本的及び具体的態様から両意匠に生ずる全体的な共通する美感を左右するほどの意匠的差異とは認められない。

(5)  以上のとおり、本願意匠と引用意匠との相違点はいずれも、両意匠の美感を左右するに足りない微差というほかなく、これら相違点を総合して検討しても、両意匠を別異の意匠とする程度の美感の相違はないものといわなければならない。

したがって、本願意匠は引用意匠に類似するとした審決の判断に誤りはない。

なお、原告らは、審決が、意匠法3条1項3号の規定の誤った解釈に基づいて、類否判断をした結果、本願意匠は引用意匠に類似すると、誤って判断したと縷々主張する。

しかしながら、上記のとおり、本願意匠と引用意匠との相違点はいずれも、両意匠の美感を左右するに足りない微差であって、本願意匠は引用意匠に類似するとした審決の判断に誤りはないのであるから、審決が意匠法3条1項3号の規定の誤った解釈に基づいて判断をしたために、類否判断を誤ったとは認められないので、原告らの上記主張は採用できない。

4  以上のとおり、原告ら主張の取消事由はいずれも理由がなく、その他審決に取り消すべき瑕疵はない。

よって、原告らの本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条、93条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 牧野利秋 裁判官 押切瞳 裁判官 芝田俊文)

平成3年審判第10446号

審決

東京都豊島区南池袋二丁目22番1号

請求人 三和エクステリア 株式会社

東京都新宿区西新宿二丁目1番1号

請求人 三和シヤッター工業 株式会社

東京都渋谷区手駄ケ谷三丁目60番6号 原宿第1宮庭マンション6階 澤野特許事務所

代理人弁理 澤野勝文

東京都渋谷区千駄ケ谷三丁目60番6号 原宿第1宮庭マンション6階 澤野特許事務所

代理人弁理士 川尻明

昭和62年 意匠登録願 第27821号「門扉」拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する.

結論

本件審判の請求は、成り立たない.

理由

この出願の意匠は、昭和62年7月8日の意匠登録出願に係り、願書の記載及び願書に添付した図面の記載によれば、その要旨は、意匠に係る物品を「門扉」とした別紙第一に示すとおりのものである(以下「本願意匠」という)。

これに対して、原審で拒絶の理由として引用した意匠は、昭和59年9月6日特許庁発行の意匠公報に記載の意匠登録第551350号類似第1号(出願日、昭和57年2月4日、登録日、昭和59年6月12日)の意匠であって、同公報の記載によれば、その要旨は、意匠に係る物品を「門扉」とした別紙第二に示すとおりのものである(以下「引用意匠」という)。

そこで、本願意匠と引用意匠について、比較検討すると、両意匠は、意匠に係る物品が一致し、形態については、以下に示す共通点と相違点がある。

すなわち、両意匠は、左右に立設した2本の縦框の上下端に各1本の横桟を架設して縦長矩形状の枠体を形成し、該枠体部の内側全面を細い横桟体で間隔を密にして、多数本等間隔に並設して横格子部を形成した基本的構成態様が共通するものである。

そして、各部の具体的な態様については、枠体部の内縁に細幅の入れ子縁を設けて、各縱框と上下の横桟の前後面側を幅広とする偏平矩形状の筒体とし、上下の横桟を縱框よりやゝ広幅とし、枠体内の細い横桟体を断面形状を略矩形状として、その四隅を面取りした細い桟体とし、各細い横桟体間の間隙を細い桟体の前後面側の幅の略1/4とする狭い間隔とした点が共通するものである。

両意匠の具体的な態様の相違点は、以下のとおりである。

〈1〉横格子部の細い横桟体を、本願意匠は、35本としたのに対して、引用意匠は、31本としている点、そして、該細い横桟体を、本願意匠は、前後面側の上下を幅広に面取りした断面形状を中空の偏平八角形状の筒体としたのに対して、引用意匠は、上下面側の中央から前後方向に向かって面取りして断面形状を略六角形状の棒体としている点、

〈2〉横格子部内の中央寄り縦方向に、引用意匠は、2本の細い縦桟を設けているのに対して、本願意匠は、橫格子部内には、何も設けていない点である。

そこで、これらの共通点と相違点を総合して、両意匠を全体として考察すると、前記の共通するとした基本的構成態様と各部の具体的な態様である、縦長矩形状の枠体の内側全面を細い横桟体で間隔を密にして、多数本等間隔に並設して横格子部を形成し、そして、枠体の内縁に細幅の入れ子縁を設け、各縦框と上下の横桟の前後面側を幅広とする偏平矩形状の筒体とし、上下の横桟を縦框よりやゝ広幅とし、枠体内の細い横桟体の断面形状を略矩形状として、その四隅を面取りした細い桟体とし、各細い横桟体間の間隙を細い桟体の前後面側の幅の略1/4とする狭い間隔としているところの態様は、両意匠の形態上の特徴を最もよく表わしており、意匠的まとまりを形成し、かっ、形態全体の支配的部分を占めるものであり、看者の注意を最も強く引くところであるから、類否判断を左右する要部をなすものである。

これに対して、具体的な態様における相違点の、

〈1〉の本願意匠が、横格子部の細い横桟体を、35本として、該細い横桟体の前後面側の上下を幅広に面取りした断面形状を中空の偏平八角形状の筒体としたのに対して、引用意匠は、横格子部の細い橫桟体を、31本として、該細い横桟体の上下面側の中央から前後方向に向かって面取りして断面形状を略六角形状の棒体としている点の差であるが、格子部の細い桟体を面取りすることば、この種の物品においては、むしろ普通になされている態様であって、本願意匠の細い横核体の前後面側の上下を幅広に面取りした点は、ありふれた改変にとどまるものであり、また、断面形状を本願意匠が偏平八角形状としたために上下面中央の横方向に細幅面が形成され、それが各桟体間の僅かな間隙から見られる点についても、各桟体間の間隙が僅かなために、該細幅面の存在が余り目立たず、前記の細い横桟体の本数の差や、その細い桟体の形状の差は、枠体の内側全面に細い横桟体を間隔を密に多数本等間隔に並設して横格子部を形成して、細い横桟体の断面形状を略矩形状とし、その四隅を面取りした細い桟体とし、各細い横桟体間の間隙を細い桟体の前後面側の幅の略1/4とする狭い間隔としている共通する態様の中にあっては、細部の変更にとどまり、また、桟体が中空であるか否かについても、本願の出願前から、この種の物品の分野においては、筒体としたり棒体とすることは、普遍になされている態様であって、本願意匠の態様もありふれた改変にとどまるものである。

したがって、これらの点が本願意匠にのみ見られる新規な態様であるとも、特徴がある態様を表わしているともいえないから、類否判断に影響をおよぼすものとはいい難い。

〈2〉の本願意匠が、横格子部内には、何も設けていない点であるが、引用意匠の2本の細い縦桟を設けている点がむしろ特徴があるといえるものの、僅かな間隙にその存在が視認できるものであって、さほど目立たず、また、横格子のみからなる本願意匠の態様も、本願の出願前から、この種の物品の分野においては、むしろ普通になされている態様であって、これもまた特徴がある態様とはいえない。

してみると、前記した相違点は、いずれも部分等的な差ないしは僅かな差で、前記の共通するとした特徴の中に包摂される微弱な相違といわざるをえないものである。

以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が一致し、形態においても形態上の特徴を最もよく表わし類否判断を左右する要部において共通しており、具体的な態様における相違点を絵合しても、共通点を凌駕しないので、本願意匠は、引用意匠に類似するものというほかない。

したがって、本願意匠は、その出願前に頒布された刊行物に記載のものに類似するから、意匠法第3条第1項第3号に該当し、同条第1項の規定により意匠登録を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。

平成7年3月14日

審判長 特許庁審判官 (略)

特許庁審判官 (略)

特許庁審判官 (略)

別紙第一 本願の意匠

意匠に係る物品 門扉

説明 背面図は正面図と対称にあらわれる。

〈省略〉

別紙第二 引用意匠

意匠に係る物品 門扉

説明 背面図は正面図と対称にあらわれる。

左側面図は右側面図と同一にあらわれる。

〈省略〉

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